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クライスラー作業マニュアルから総合情報:エアバッグシステムについて

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2000 BODY DIAGNOSTIC PROCEDURES / RAM VAN 編

 クライスラーのディーラー向け作業マニュアルはで5冊で、積み上げると10cmぐらいの厚さになるマニュアルです。車種ごと、年式ごとに発行されているのでその数は膨大な数になります。
 一般的にアメ車屋さんがこういったマニュアルを持っていることは少なく、長年の経験と横の繋がりを活用して諸々の問題に対応しているようです。クライスラーだけではなくフォードやGMにも対応して、さらに国産車も手掛ける工場であれば車種ごとのマニュアルを持つことは実質不可能でしょう。今はオンラインで参照することもできるようではありますが。

 その点クライスラーのこの車種専門と謳っている工場はそもそも専門の経験値が高い上に、マニュアルもメーカー純正診断機も揃えて対応を完璧にしているところもあります。ラムバンの場合、東京及び近郊都市、愛知県、大阪などラムバン専門店がいくつかあります。遠くの地方都市からわざわざ、そういった専門ショップに足を伸ばして修理やカスタムを依頼するオーナーも多いようですね。こういった専門ショップは言わば聖地みたいなもので、いつかはお世話になってみたいなぁなんてことは思います。

 なかなかそこまでできない私の場合、出来ることは自分でやろうとマニュアルを持っています。流石に素人の範囲を超えていると判断した時はアメ車も受け入れてくれるショップに持っていきます。その時にさりげなくこのマニュアルも座席に乗せておけば工場も参考にできるのでいいかなと思います。押し付けるとプロのプライドを傷つけることになりかねないので、さりげなくが大事かなと思っています。

 この章では車体関係の故障診断手順をまとめた「2000 BODY DIAGNOSTIC PROCEDURES / RAM VAN」を紹介します。
マニュアルはものすごく長い英語の上に、略語も多く理解がなかなか大変です。当たり前すぎて必要のない事項もあります。サイトのこのカテゴリーではこのマニュアルの重要と思われるところ、よく故障するところを中心に、私のいい加減な翻訳と経験を混ぜて中身を紹介していきます。自分で愛車を手を掛けて維持管理していきたいと考えている人に役立つ情報にしたいと思います。マニュアルはまず総論として諸注意や諸元などが書かれています。自分の車を知る手がかりになる情報ですのでまずはここから紹介していきます。難解で回りくどい言い回しも多いので、思い切って理解しやすい文章に意訳したり省略した部分もあります。誤訳もあるかもしれません。

はじめに

 手順マニュアルには2000年型の車体の故障を診断するために諸元、手順と図解を含めてまとめてあります。マニュアルでは故障診断は故障の状態や診断時の症状を元に診断していくようになっています。
診断の方針を決める時には以下の提案を参考にして下さい。

1.最初にDRBⅢが適切に各モジュールと通信するかを確認すること。"No Response"であるならばまずこれに対処しなければならない。(→各コネクターやハーネス、そしてPCMの不具合が考えられますということ)

2.DRBⅢでDTC's(diagnostic trouble codes)を読み取る。(DRBⅢはクライスラー純正の故障診断機の名称、おそらく2005年ぐらいまでの車種を診断できると思われる)

3.もし現時点でDTC'sが表示されないならば、顧客の症状の訴えを確認する必要がある。

4.DTCか顧客の訴えが確認できたら、症状からマニュアルの目次で故障の診断と位置の特定を進める。

DTCによる故障診断を行う前に、このマニュアルを一読しておくこと。
純正のDRBⅢの故障診断プログラムは毎年更新される。

(クライスラー純正診断機DRBⅢはe-bayなどでも出品されていますが、日本円で30〜40万円ぐらいの価格です。たまに日本のヤフオクでも出品されていることもあります。。古い中古品であるにも関わらず、かなり高額な商品であり、アマチュアはこれにこだわる必要はないかなと思います。多分これ単独でPCMへの書き込みができるのかと思います。このことのメリットは相当ありますけれどね。)

1.1 適用範囲

2000年式ラムバンでエアバッグシステム搭載車、ハイライン(CTM装備車)
ハイライン(HighLine)はハイグレードのことだろうか、CTMはcentral timer moduleのことで盗難防止や遅延消灯ライト、クルーズコントロールなど様々な高度な機能を受け持つモジュール。簡素なパッセンジャーの私のタイプにはついていない。

1.2 6段階のトラブルシューティング手順

車体診断は6段階の基本ステップによっておこなう。

・症状の確認
・関係する症状の確認
・症状の解析
・故障の分離
・分離した故障の修理
・正常な動作の確認

故障の問題点を分離して解析することは重要です。年季の入った車屋さんでよく観察しているとプロはこれが的確だな上手いなと思います。コネクタを外して確認したり、わざと故障した部品を入れてみて比較したりなど)

2.0 体系の確認

この車両体系のマニュアル”body”には次の項目が含まれます。

・エアバッグシステム(ACM)
・チャイムシステム
・半ドア警報システム
・インスツルメントクラスター(MIC)
・インテリアライティングシステム
・集中ドアロックシステム
・車両通信
・車両盗難防止システム(VTSS)
・ワイパーシステム

3.0 機能の操作と説明

 車両の電気的システムはCCD バス(Chrysler Collision Detection multiplex system)を通じた2つの通信モジュールによって構成されています。それらの2つのモジュール、PCM(Powertrain Control Module)とCAB(the Controller Anti-lock Brake)は単に車両のパーツというより、それらが通信によってCCD を利用している。
CABは診断のためにCCD バスを利用している。PCMはCCD バスを通じて数年分の診断データを受けたり送ったりしている。

 CCD バスは車両の構成部品と回路の操作についての情報を該当モジュールに素早く送っている。全てのモジュールがバスを通して変換された様々な情報を受け取っている。二進法のバイナリーデータには故障の位置情報が含まれています。このデータ送信によって車両の配線回路の複雑さが大幅に軽減されます。

3.1 エアバッグシステム

 ACM(Airbag Control Module)はドライバーズシートの下、床パネルに取り付けられたブランケットに固定されています。ACMにはマイクロプロセッサ、衝撃センサー、エネルギー蓄積キャパシタが含まれます。マイクロプロセッサにはエアバッグシステム論理回路が組み込まれています。ACMは診断能力のあるOBD(On-Board Diagnostics)を内蔵しています。そしてCCD (Chrysler Collision Detection)上でインスツルメントクラスターの回路と通信し、エアバッグ警告灯の表示を制御しています。

 ACMのマイクロプロセッサはシステム判定を決定するために衝撃センサーとエアバッグシステムの電気回路を監視しています。ACMは監視しているシステムのエラーを検知したら、エアバッグ警告灯をインスツルメントクラスターで点灯させるようにCCD バス上で信号を送ります。あらかじめプログラムされているACMマイクロプロセッサの判定アルゴリズムは衝撃センサーがエアバッグの保護システムが必要な強い衝撃として減速を検知することで判断しています。プログラムされた条件が合致した時は、ACMはエアバッグシステムの構成要素に電気信号を送ります。

 衝撃センサーはエアバッグシステムだけに利用されます。衝撃センサーは車両の減速度を検知する加速度計で、衝撃の重大性と衝撃方向を検知しています。衝撃センサーは特定の車両に対して調整されています。そしてそれはACMに付帯するユニットとして提供されています。

 ACMにはエネルギー蓄積キャパシタが内蔵されています。このキャパシタは衝撃を受けたときにバッテリーが断線したり故障しても1秒でフォローし、エアバッグを展開させるのに十分な電気的エネルギーを蓄積しています。キャパシタの目的は二次的な激しい衝撃に対してエアバッグが作動して衝撃を緩衝するためです。もし、初期の衝撃でバッテリーが壊れたり、断線したらエアバッグを十分に展開できません。

 エアバッグシステムは極めて繊細、複雑な電子機械ユニットです。エアバッグシステムやステアリングホイール、ステアリングコラム、インスツルメントパネル構成部品を故障診断や修理する場合は、必ず最初にバッテリーのマイナス端子を外さなければなりません。それから、キャパシタがシステムを作動させないように、2分間放電させます。これはエアバッグシステムを作動不可にする唯一の方法です。この作業に失敗するとエアバッグ展開による事故と怪我の可能性があります。

 センサーが検知するような衝撃として、絶対にACM(エアバッグ・コントロール・モジュール)をぶつけたり、蹴ったりしてはいけません。もし、修理中にACMを落としてしまった場合、そのモジュールは廃棄して新しいユニットに交換するべきです。

エアバッグの概要説明が長い!まだ半分だー。
エアバッグシステムの仕組みが理解できますね。キャパシタがエアバッグの非常電源になっているわけですね。衝撃センサーはおそらく前後方向の衝撃(急激な減速)を検知しているはずです。高年式の車両ならさらに多方向の衝撃を検知するセンサーが多用されていますが、この時代ですから前後だけでしょう。

 エアバッグ警告灯はシステム故障の症状を顧客が唯一観察できるところです。イグニションキーを”run”から"srart"へ回すときはいつでもACM(Airbag Control Module)は6〜8秒の間、AIRBAG警告灯を点灯させることでランプチェックをします。ランプが消灯したなら、それはACMがシステムをチェックして識別可能な故障は見つからなかったことを示しています。もしランプが点灯したままなら、システムの障害かMICランプ回路の内部ショートがあるのでしょう。もし、ランプが6〜8秒以上経ってから消灯するのであれば、システム内部の断続的な問題が存在しています。

 MIC(Mechanical Instrument Cluster)は不良バルブと駆動回路のチェックをしている間、エアバッグ警告灯とシートベルト警告灯を制御しています。MICはクラスターバルブをチェックしながらエアバッグ警告灯をテストします。もしエアバッグ警告灯が故障しているならMICはシートベルト警告灯を代わりに点灯します。エアバッグ警告灯が故障しているならば、MICはシートベルト警告灯の点滅を約30回行いドライバーに警告します。警告灯の状態はCCDバスを通じてACMに連続的に送っています。

エアバッグ警告灯についての顧客の訴えの原因を見つけるためにこの本の中の警告灯バルブと起動についての手順を実行してください。例えば

警告灯が光らない
DTC'sが検出されないが警告灯が光ったままだ

ACMは修理や調整ができません。もし壊れたり故障した場合、交換しなければなりません。
エアバッグシステムについての保守や情報ラベルは運転席のサンバイザーとグローブボックスそしてエンジンルームに中に表示されています。

警告:エアバッグシステムは認定されたディーラーによる適切な保守でなければ事故によって怪我を負うことがあり得ます。

そんなディーラーはもうないんだよっ!アメ車屋さん頑張ってくださーい!!

この項目は長いので、少しずつ追加していきます。また気付いた時点で適時修正を加えていますので、内容が変わっていることもあります。悪しからず。

続き

ドライバーエアバッグモジュール/Driver Airbag Module(DAB)

 エアバッグ保護カバーはドライバー側のエアバッグで最も目に付く部分です。そのモジュールはステアリングホイールに直接固定されています。エアバッグクッションとクッション構成部品と共にホーンスイッチでもあるトリムカバーの下に設置されています。
 エアバッグモジュールはクッションとセットされ、密閉されたインフレーターを収納しています。エアバッグモジュールは修理不可です。展開したもの、ダメージを受けたものは交換しなければなりません。インフレーターアセンブリーはエアバッグモジュールの後方に固定されています。インフレーターはエアバッグクッションの隙間に密閉されています。そして正しい電気信号と共にクッションの中にガスを直接放出します。保護トリムカバーはエアバッグモジュールの正面にピッタリと収まっている。そしてステアリングホイールの真ん中で装飾カバーにもなっています。エアバッグが展開する時、カバーはあらかじめ入れられた割り線で分割するようになっています。

インフレータというのは言わば起爆装置みたいなものだね。助手席はダッシュボードまでの距離があるので、高圧アルゴンガスの威力でより速く展開するようになっているのです。展開のスピードは標準的に0.03秒と言われ、人間の瞬きより速いということです。

 エアバッグモジュールインフレーターにはアジ化ナトリウムと硝酸アンモニウムが組み込まれています。これらの物質は有毒で非常に可燃性の高いものです。酸と水、あるいは重金属が接触すると有毒で刺激性のあるガス(水の存在により水酸化ナトリウムが生成される)あるいは可燃性の化合物が生成します。加えて、パッセンジャー(助手席)のエアバッグモジュールにはアルゴンガスが2500psi以上で封入されています。エアバッグモジュールの分解やインフレーターの改造を試みたりしないで下さい。刺したり燃やしたり通電させたりしてはいけません。また93℃以上で保管したりしないで下さい。

クロック スプリング/Clockspring

 クロックスプリングはステアリングホイールの後ろ、ステアリングコラムに固定されています。そのアッセンブリーはステアリングホイールの回転に伴って巻いたり解けたりする平らでリボンのような導電性のあるテープを収納したプラスティックのケースで構成されています。インスツルメントパネル配線とドライバー側エアバッグモジュール、ホーンスイッチ、装備されている車両ならスピードコントロールスイッチ(クルーズコントロールのこと)の間を電気的に接続させるためにクロックスプリングは使用されています。保守修理で外した後にもクロックスプリングはステアリングコラムの真ん中に正しく設置されなければなりません。でなければ損傷する可能性があります。

 クロックスプリングは修理することはできません。必要であれば交換することになります。

ステアリングの回転は有限なので、車のクロックスプリングは長いリボン状の形状で左右の回転に対応しています。運転中はいつも動いているので経年劣化により断線することがあります。このときは修理はできず交換しかないと言ってますね。クロックスプリングはセンター出しが重要です。左右がずれていると短い側で突っ張ってリボンが切れてしまいます。不用意にステアリングホイールを外すとセンターが分からなくなるので注意が必要です。

パッセンジャー(助手席)エアバッグモジュール(PAB)

 グローブボックスの上、インスツルメントトップカバーに設置されたエアバッグドアは助手席側エアバッグシステムのパーツとしては最も目立つものです。エアバッグクッションとそれを作動させる構成部品はエアバッグドアの下にあります。エアバッグモジュールはクッションとインフレーターが接続・密閉された筐体を収納しています。エアバッグモジュールは修理できません。展開したりダメージを受けた場合は、交換が必要です。インフレーターアッセンブリーはエアバッグモジュールの後ろに固定されています。インフレーターは高圧のアルゴンガスを封入した小さな容器を収納しています。インフレーターはエアバッグクッションの中に密閉固定されています。そして正しい電気信号が送られることによって圧縮ガスが直接クッション内に放出されます。エアバッグドアはトップカバー上で固定されている一体型ヒンジとなっています。このドアには内装カバーの下の見えないところであらかじめ割り溝が入れられています。エアバッグが展開するときエアバッグドアは割り溝にそって分割します。そしてドアは開口部を軸に開きます。

 開けたグローブボックスの上側のインスツルメントパネルのスチール構造体底部にエアバッグモジュールが固定されています。エアバッグドアは運転席と助手席のヒーターとエアコン吹出しパネルを含めて、助手席エアバッグモジュールのユニットとして保守整備されます。つまりエアバッグが展開したらエアバッグモジュールとインスツルメントパネルは同時に交換しなければなりません。

助手席エアバッグ ON/OFF スイッチ

マニュアルによると助手席エアバッグのon/offスイッチがエアコン風量調整の横、シガーライター、パワーアウトレット部分にあるように書かれています。しかし、エアバッグon/offスイッチが装備されている車両は未だ見たことがないのでこの項目は省略します。修理時の安全のためなのかあるいはひとりでの乗車時にはこれをオフにしておけば衝突しても修理費用が抑えられるからだろうか。オンする事を忘れる恐れもあるので謎のスイッチですね。

3.1.1 エアバッグ故障診断コード

 エアバッグ故障診断コードには現状コード(active codes)と保存コード(stored codes)があります。もしひとつ以上の故障コードがある場合は診断機は現状コードを優先的に示します。
 どの故障コードも特定の手順によって判断されます。故障診断手順には故障コードの原因を決定する為の段階的な手順が含まれています。個々の故障コードを解析するために本書のテストが全て必要というわけではありません。
故障診断はDRB IIIを利用して診断コードを読み取ることから始まります。これはあなたが作業すべきことを明確に示します。
 エアバッグについての現状診断コードは不変ではなくコードの原因が正された時には変更されます。このマニュアル中の手順においては故障診断コードは診断ツールとして使われています。

3.1.2 Active Codes(現状コード、継続中のコード)

故障が発生した時点で診断コードが発動されます。Active Codesは継続中の故障を表示します。エアバッグコントロールモジュール(ACM)は回路と機能を常にチェックしているので、Active Codesは実際にまだ続いている不具合を表示しています。Active Codesは消すことができます。つまりトラブルコードの原因が解消された時は自動的に消去されます。

警告灯のトラブルコードや故障以外では、継続中の故障が発見された時にはエアバッグ警告灯が少なくとも12秒間点灯します。

もしエアバッグ警告灯が故障した場合、シートベルト警告灯がエアバッグ警告灯の代わりをします。エアバッグ警告灯が故障している場合、シートベルト警告灯が30回点滅します。

3.1.3 Stored Codes(保存コード)

エアバッグのコードは故障が検知されるとすぐにACM(Airbag Control Module)のメモリーに保存されます。例外は唯一のActive Codesである”Loss of Ignition Run Only”コードだけです。保存コードはある時点でActive Codesが存在していたことを示しています。そのコードは実際には今現在の故障コードではないかもしれませんが、他のActive Codesを示すことがあります。

故障が発生した時には、エアバッグ警告灯は少なくとも12秒間点灯します。(12秒以下なら問題が生じています)コードは分単位で保存されます。そして最後に検知された故障からの始動回数を保存しています。コードの検出時間が1分間以内であれば、コードは1分間として表示されます。例えば2分13秒であれば3分として表示されます。もし故障が検出されたら、故障診断コードは故障の存在を示すため保存されます。もし故障が解消した場合には始動回数がコードに保存されます。

故障が検出された時は故障診断コードが保存されます。そしてその故障が存在する限り保存され続けます。もし故障が解消されてから、イグニションサイクルが100回になるまで同じ故障が発生しなければ、故障診断コードは消去されます。そしてイグニションサイクルカウンタは0にリセットされます。もし、カウンタが100になるまでの間に同じ故障が発生した時はイグニションサイクルカウンタはリセットされ診断コードは保存され続けることになります。