van life /バンライフ

アカデミー賞作品賞受賞 ”ノマドランド”の原作”ノマド: 漂流する高齢労働者たち”について再び”

van life /バンライフ

ノマドには歴史があった!

 2011年 ハンティントンさんが始めたらしいことになっている流行りの”バンライフ”ムーブメント。

 話題の映画『ノマドランド』原作書籍”ノマド: 漂流する高齢労働者たち”を読んでみると、実際はもっと以前からアメリカではその下地ができている上に、世界的な金融危機がキッカケとなっていることがよく理解できる。おそらくハンティントンさんはボブ・ウェルズさんの”安上がりRV生活”Cheap RV living.comこのサイトに影響されたのかなと思います。

 時系列的にもボブさんは1995年には車上生活を始めています。
ボブの有名サイト 安上がりRV生活”https://www.cheaprvliving.com/
このサイトはすごい情報量です。フォーラムも設置されているので、初心者が質問すればベテランが問題解決のために投稿してくれます。”バンライフ”生活のためのバン改造の手順や設置機器などの情報も満載。英語だけどじっくり読めば理解できるので参考になりますよ。

 ボブさんのノマド生活の始まりの40歳で箱型トラックに移り住んだくだりはついに車上生活者に落ちぶれた悲哀に満ちたものだが、その後の展開は明るい。明るいというか前向きだ。

 この本で知って驚いたのはアメリカのノマド=ワーキャンパー向けの仕事という一分野が形成され、それに対する専門業者(人材派遣会社)とサイトがあるということ。

 繁忙期だけ人を雇いたい仕事は多数ありいつも人員の確保に悩まされてきたはずだが、いつの間にかこんな世界になっていたんだろう。特に米アマゾンは倉庫でのピッキング作業員用の無料キャンパーサイトを用意してノマドを雇う体制を確立していることに驚いた。

 金輪際、家賃は払わない!という彼らノマドの強い姿勢が潔い。そして社会はそれを受け入れる体制を少しずつ整えている。

 日本のバンライフブームの場合、生活困窮が発端ではなさそうなのですが、アメリカのノマドはもっと思い詰めているというか真剣というか後が無いというか困窮高齢者が最後に放った一撃のような強さがあります。そこに自由というアメリカ人が最も愛する言葉が付属すれば最強の生き方かもしれない。

バンライフの行先/これから日本はどうなるのだろうか

 日本ではバンライフを実践しているのは貯金かリモートワークで収入のある比較的若い人達だが、あちらでは中高齢者が主役。公的年金が500ドル程度らしいので、これにプラスして収入を得るために彼は季節ごとに国中を移動する。倉庫作業員や農業従事、キャンプ場管理人など仕事は多岐に渡り、適切な時期に適切な場所に行けば仕事はある。
 統計的にその数は分からないらしいが、アリゾナとツーソンの間にあるクオーツサイトという街には季節になると数万人のノマドが集まって人口が膨れ上がるという。全米ではもう既にすごい数のノマドが発生しているのだろう。

 帰る場所を確保してのバンライフはノマドではない。その決断の潔さが読む者の心を捉えて離さない。余分なモノを全て捨てて車一台分だけ。そして旅の途中でも更に身軽になるために不用品を減らし続ける。

 今、日本で流行っているバンライフってのはほんの入り口なのかもしれない。まだ格好いいとかお洒落というトレンド感が先行している気がします。しかし日本でも高齢化が進み、困窮老人の問題が顕在化している以上、この高齢労働者のノマドが増加してくるのは間違いないでしょう。そしてそれに合わせて社会も変化していく。

 現地ノマドが乗っているのは自走キャンピングカーはもちろん牽引カーゴ、フォードエコノライン、エクスプレス、ラムバン、シェビーの年代物バン、シェル付ピックアップ、現役引退スクールバス、果てはプリウス!なんでもあり。自由ってのは、人目を気にしないことかも。