チャーリーとの旅―アメリカを求めて
後のノーベル賞作家文豪ジョン・スタインベックが愛犬チャーリーと共にアメリカ再発見の旅に出る。相棒はキャンピングカー”ロシナンテ号”(名作ドン・キホーテの”老馬”ですね)、16000kmに及ぶアメリカ大陸横断は知っているはずの自分の国についての無知を知る旅。バンライフしちゃっている人、最後に帰るのは家です。
という抄訳で ノマドの聖典 その1 編で紹介しましたが、
文豪の旅行記だけあって文章に味わいがあり、時代の記録としても面白いので単独で取り上げてみたい。ネタバレではなくノマドやバンライフという話題に絡めて、この本を手にしてみようかなと思ってもらえるといいなと。
まずスタインベックと一緒に旅をするために、ロシナンテ号はどんな車なのか確認しておきたい。書籍の紹介としては簡単にキャンピングカーとされているが、それでは満足できないですよね。出発前の記述ではトラックの荷台に箱を乗せて特注で製作された車両、今風に言えばキャブコンバージョンなのだろうと思われる。0.75t積みの小型トラック、V6エンジン、キャビンにはダブルベッド、冷蔵庫、ヒーター、洋服ダンスが備えられた船室のようなキャビン。これぐらいのイメージを頭に入れておいて、チャーリーと共に旅に出たい。
追記
調べていたら、国立スタインベックセンターなるものが、サンフランシスコ南のモントレーにあることを発見!(さすがノーベル賞作家)そのサイトにスタインベックのキャンピングカーが実物紹介されているではないか!
これは1960年型GMC(シボレー C-10)のトラックキャンパーが正解でした。直6、V6、V8エンジンが選択できたみたいです。このフェイスはデコが二つに割れて少しブサイクかも、、味はあるね。このキャビンに自分以外に6人の客人を招待できるのか・・・。
北へ
旅はニューヨーク州ロングアイランドから始まってまず北上しメーン州(メイン州)へ。メーン州と聞いてどれだけの人が位置を認識できるだろうか。おそらくほとんどの日本人は分からないのでは。アメリカ合衆国の右上つまり北東の端の端、文豪いわく突き出した親指の位置だそうだ。
時は1960年秋、この当時ですでに移動労働者や住宅車の表現があって興味深い。じゃがいも収穫時期には労働者が集まってきて、その期間テントを張る者や車で生活する者があったのだ。映画ノマドランドより遥か昔から、かの国では車での移動労働者が存在していたことに驚く。映画を観るまでもなくアメリカは筋金入りのノマドランドであった。
西へ
その後、旅は西へ西へシアトルから南下、カリフォルニア、南部を回ってニューヨークに戻る。たった一行で済ませたけど、途方もない距離です。
南に
さすがに文豪も途中、旅の知見に腹一杯になり、投げやりな状態になるが、一転テキサス愛が炸裂する!どこに行ってもテキサスが付いてくるというあたりは読んでて楽しい。私もテキサス大好きです。
旅の終わり
続く最南部ニューオーリンズでの出来事がこの旅行記のクライマックスであり、アメリカの歴史の一部であり、アメリカ人の一部であり、闇であり、未だ見ぬ光である。この旅行は1960年、私がアメリカ旅行したのは1990年頃、今2021年、この間にアメリカはこの問題に決着をつけることができなかったのは確か。人間とはなんだろうな。そして旅とは何か。VANで旅する人も、VANがあるだけLIFEの人も、アメリカ大好きな人も読んでおいた方が良い一冊と思います。
私もかつて一年近くかけてアメリカ大陸をぐるりと一周したことがあります。スタインベックとは逆回りでロス入りロス出で。なんの予備知識も持たず、ただ飛び出して行ったので、後から思うと随分勿体ない旅だったなと思いました。詳細を調べて、見るべきものを、知るべきことを把握しておけば良かった。そうすればもっと濃い旅になったのにな。行き当たりばったりの良さもあるけど、未だに知らないことばかりだ。
全体を通して気になることがあった。それはこれほど広大な土地のアメリカにおいてもその日の停泊地はどこでもいいという訳ではないということ。景色はどうだ、人目につかない場所か、私有地でないか、警察がいないか、近くで狩猟をしていないか、他の車に近すぎやしないか、シャワーが使えるところはないか、食事にはありつけるか、、、
これって日本でも全く同じですね。車上生活は疲れると思います。2、3日なら今日寝る所に悩んでも遊びのうちで片付けられるけど、ずっと続くとなるとね。キツイな。
最後にアメリカに限らないけど、外国の話を読むときにGoogle Earthで現地に舞い降りてみると行ったことのない土地の様子を知ることができて楽しいですね。それにしても延々と真っ直ぐな道。この道を走り続けるにはやっぱり大排気量のアメ車ですよね!!